2011年08月02日

PTSDとそのケアの基本


震災支援ボランティアさんに向けて、PTSDについて書きます。

参考にした文献はこちらです。

小西聖子・伊藤晋二2003犯罪心理学 武蔵野大学通信教育部
小西聖子 2006 犯罪被害者の心の傷(増補新版) 白水社



1.トラウマとPTSD
強い恐怖を伴う、危うく死ぬまたは重傷を負うようなトラウマティックな出来事を
体験すると、多くが急性ストレス障害(ASD)となります。
再体験、回避、覚醒亢進の症状が1ヵ月以上持続した時には
外傷後ストレス障害(PTSD)と診断されます。

(1)  再体験
その出来事の記憶、思考、イメージ、皮膚の感覚や痛みなどが、
自分の中に勝手に思い出されてきて再体験されます。
一連のイメージが勝手に思い浮かんできて止めることができないことがあります。

(2) 回避・麻痺
出来事と関連した思考、感情または会話を回避しようとし、
出来事を想起させる場所や人物を避けようとします。
重要な活動へ参加できない、感情の範囲の縮小、などの症状があります。

(3) 過剰覚醒
以前にはなかったような覚醒亢進症状が続き、入眠または睡眠維持が困難になる
場合があります。物音などに敏感になる、怒りが爆発する、
集中困難や過度の警戒心を持つ、過剰な驚愕反応が起こるなどの症状があります。 

多くの災害後の調査でPTSDの率は一割程度です。

2.  PTSDのケア
 事件・事故・災害によって突然家族を失った場合、
深い悲嘆の感情に加えて、世界がそれまでのように
安全で信頼できるものではないと感じられます。
また、自分に悪い部分があったり、不注意によって起きたと、
自分を責める気持ちを持っている場合が多くみられます。

 自律神経系、内分泌系(ホルモン)、免疫系に反応が起きて、
不快な症状が現れていても、これは異常な状態での
身体の正常な反応であることを伝え、
心配を減らせるようにすることが大切です。

 そして、深刻な内容の話でも話をさえぎらずに聴きます。
感情を出せる場として、罪責感のような感情も批判せずに
そのまま受け入れるようにします。
自責感を軽減するよう気をつけて聴きます。

 睡眠障害や不安症状に対しては薬物療法も有効です。専門医の診察により
適切な薬物を使用できるよう、支援することが大切です。

 カウンセリングなり治療なりが支援できるのは、
失われたものを失われたものとして受け入れていくということです。
穏やかに悲しむことができるようになることを目指すといってもよいです。
 
3.  支援する者のケア
 被害者の話を聞くのは、多くの人にとってつらい体験であり、どう対応したらいいのか、
困惑させられるものです。
 深刻な喪失体験を扱うカウンセリングは、カウンセラー自身にも「生きていることの意味」を
深く考えさせます。
 またその意味を考えもせずにいては、聞くことさえむずかしくなってきます。
そして、無力感と自責感を感じ、話を聞く側も傷つくことがあります。


 相談者は、世界が信頼できなくなっているから、たいへんな不安をかかえて来訪しており、
カウンセラーの立場は非常に強いものとなります。このため、言動に注意を払う必要があります。
カウンセラーが自分の技術に不安があると、その場の状況の認知を歪ませる結果となります。

 結果を急いだり、相談者の自己評価をさらに下げたりしないように、
カウンセラーは自分自身の感情についても敏感である必要があります。
相談者が自分で決めることができること、自分でコントロールすることを取り戻してもらえるように
することが大切であり、カウンセラーへの依存が起きないようにすることが大切です。

 回復には非常に時間がかかり、被害者の苦痛や怒りなどの強い気持ちに長い時間さらされると、
あせりを感じたり、感情的枯渇が起こることもあるために、
スーパーバイザー(専門知識のある相談相手)が必要です。

 強烈な体験、感情を受け取り、それに共感する仕事は、ケアをする人自身の
メンタルヘルスが重要です。警察官、消防官、医師、看護師も同様です。

 ケアする人が自分の気持ちを話せるような、
自分のチームやサポート環境を持っている必要があります。

posted by たびのくま at 23:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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