2009年09月10日

和解

いちょう1.JPG
茗荷谷の占春園のいちょうです。

再び、森山公夫著「統合失調症」ちくま新書、2002からの引用です。
「迫害妄想」と「支配妄想」を含めた「関係妄想」を軸に、
統合失調症の経過を重視し、
迫害妄想病の人間学的構築を行っています。
迫害妄想型の展開は、「対人/社会恐怖様期」、
「幻覚・妄想期」、「夢幻様状態期」の3段階で示すことができ、
これを身・心・社会の視点から、患者の背負う人間的苦悩が
深化してゆく過程と捉えています。

(引用以下)

・対人/社会恐怖様段階
 軽症対人恐怖である赤面恐怖は、対人緊張の延長上で、
赤面・ふるえ・動悸などの身体的表出異常の出現に怯える、
「人前で羞恥することを恐怖する」状態で、
見方を変えればこれは「予期恐怖」である。
「予期」は想像力の産物で、この出現で現実感覚は蝕まれ、
一般人の一過性の赤面恐怖が持続的な神経症性の赤面恐怖に転化する。
 中等症対人恐怖では、予期恐怖の場がより拡がり、
身体が萎縮・硬化して、「人に見られ嫌われ軽蔑される」という
意識が強まる。内面の怯えや萎縮感はふかまり、
世間とまじわれない自分に他人との異質感をつよめ、孤立感が深まる。
軽い不眠が常態化し、生のリズムもきしんでくる。
 さらに不信がふかまり重症対人恐怖となると、非常識な行為に走る。

・迫害的幻覚・妄想期
 重症対人恐怖の被害関係念慮のきわみで迫害妄想が始まる。
「行く先々で皆が自分をジロジロ白い目で見、ひそひそ悪口を言う」
という状況依存的な妄想様観念(被害関係念慮)から、
「組織が自分を狙っている」という(真性)妄想へと移行する。
 孤立の中で自分が世間から疎外されていくという確信を深め、
その突端で、出来事をきっかけに、またはある精神状態や追想錯誤に
もとづいて、想像力によるひらめきとして迫害妄想が形成され、
それで「目から鱗が落ちたように」物事の諸関連が明らかになったと
当人は感じる。
自分を狙っている「組織」の出現により、
患者の生きる世界は決定的に相貌を変える。
「世間(共同世界)への恐怖」が「迫害され付け狙われる」に変化する。
あらゆる感覚が「迫害」に対して動員され、過敏になる。
身体はこうして、つねに過敏で、緊張し、怯えていて、
硬くぎこちない身体となる。この絶えざる緊張の中で心身は、
休むことも眠ることもできず、いつも「過労」の中にある。
この過労と、過敏・緊張・不眠とが悪循環をなして
生のリズムは崩壊し、迫害妄想の身体化を引き起こす。

・夢幻様段階
 睡眠障害が極まり、ほとんど一睡もできない「完全不眠」に入る。
患者の現実への見当識は失われ、共同性は解体して
その言動は支離滅裂となり、いわゆる意識障害の状態を呈する。

・治癒
 私は、精神病の治癒の機転を「和解」ということに求めている。
世界との和解、および自己自身との和解の中で、
病からの真の回復が生起するということである。
統合失調症の「慢性化」、つまり関係妄想症の「慢性化」は、
実は患者さんたちにとっての人生途上の挫折体験と、
それに引き続くさまざまな悪状況の中で
心的な悪循環が形成されることに起因する。
「脳内物質の異常」は、その事態の反映に他ならない。
そして、彼らの社会参加、その和解に必要なことは、
医療スタッフや家族・友人をはじめとする周囲からの支援の中で、
彼ら自身が過去の挫折体験の呪縛から解放されてゆくことと同時に、
社会自体が彼らを受け入れうる柔らかい社会へと変わってゆくことの
両方にあることをここに改めて強調しておく。


posted by たびのくま at 23:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 医療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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